ゆるーいのがいいね

人生折り返し地点に思うことや好きなことを連ねます

ブラックの味

お題「コーヒー」

 

 思えば高校くらいまで、コーヒーは苦くてうまい!とは思えなかった頃が懐かしいです。

 大学になって、北海道旅行に行った先で、美瑛(びえい)という町にあったその名も『珈琲館』という小さな喫茶店で淹れてくれた一杯から、コーヒー飲みへの味覚に目覚めました。

 

 それまで、一生ブラックなんか飲むことはないなと断言できるくらい、コーヒーの苦さに嫌悪感があったのに、一緒に連れていってくれた旅の道連れがこぞって砂糖もミルクも入れず、お店の奥さんもブラックがおいしいよと、北海道のやさしいアクセントで勧められ、じゃあ飲んでみようかな~と、何も入れずやや恐る恐る口にしてみました。

 熱い湯気を上唇に感じながら湯気の向こうから寄ってくる、透明感ある濃い茶色の水面を一口ごくんと流してみました。

 

 苦い!!マズい!という先入観でジャッジしようとした瞬間の後に、おっ!いけるぞ!!という不思議な感覚。先に下したジャッジをさっと取り下げ、うまい!に脳内で逆転判決をしたことが忘れられません。

 以後、そのお店には美瑛に滞在中は、可能な限り毎日通って、奥さんの淹れるコーヒーにぞっこんラブ(死語!)してました。

 

 なぜ、あれだけ飲めなかったブラックコーヒーが一転して受け容れられるようになったのか……

 

 そのお店のコーヒーの豆は?と聞くと、確かキーコーヒーのブレンドだったようで、別段特別な豆ではありませんでした。

 何だろう?何だろう?なぜこんなに美味いんだろう?

 あまりにも不思議で、ついにお手上げになった時、たまたま居合わせたお客さんが、ぽつりと「コーヒーのおいしさは、水とこの景色とお店の雰囲気だね。」と、さりげなくまとめていました。

 なるほど、水と景色と雰囲気ねえ。言えてます。『水』これほんとに大事ですね!当時地元大阪の水道水は、今ほどうまくなかった頃で、北海道の、とりわけ美瑛町の水は、十勝岳の雪解け水が美瑛川を流れ、それが飲み水となっている、一級品のお水です。

 それと、波上にうねる丘に、パッチワーク模様の畑が続く景色を眺めると、それだけでリラックスして、味覚が促進されますね。

 お店の雰囲気といえば、のんびりがぴったり当てはまりまして、自分の家の応接間を、お客さんに開放したようなところで、木の壁のいいにおいのする空間に、飼い猫がいて、誰ともなくが、置いてあるギターをつまびいてその生音に浸りながら飲む一杯。こりゃ、美味いに決まっておろう。

 

 珈琲館はその後、場所を転々と変え、今その家族はどこへ行ったか定かではありません。

 けど、きっとまた新しく住んでいる土地で、近所の人にくつろぎと、コーヒー好きを増やすための空間を提供していることでしょう。