ゆるーいのがいいね

人生折り返し地点に思うことや好きなことを連ねます

仕事とは

 長年、営業という、モノを売る仕事をやってきました。何年もやっていると、お客様の要望に応え続けようと必死になり、忙しすぎて首がまわらなくなります。信用されている証なのかも知れないと、自己満足の積み重ねがいつしか無理をして、結局出来るはずのことが出来なかったりすることもしばしばでした。

 

 若かりし頃、ある程度仕事を覚えてきたかなあと思えたある日のことでした。

 その日は、朝からてんてこ舞いで、A社というお客様から電話があり、

「今日は何時に来れる?」の問いに

「昼までにお伺いします。」と返事し、急きょアポイントを取った形となりました。

 A社へ行くまでにも多くの仕事でてんてこ舞いになって、時間がどんどん過ぎていき、昼までに行くつもりが、昼を過ぎてしまいました。

 

 A社の社長は、とても気さくに接していただける、自分の中では、いわばVIP級のお客様で、約束の時間は過ぎたけど、まだ昼の時間帯だしとこっち都合で思い込んで、

「こんにちは!社長おられますか?」と、悪びれもせず意気揚々と訪問しました。

 あれ? 返事がありません。

しばらくたって、社長の奥様が出てこられ、両手の人差し指だけ伸ばして、頭の左右に持っていきました。

えっ、それって…鬼?…ま、まさか…。

奥様がぼそっと「昼までに行く」と言ったから、社長は車をぶっ飛ばして帰ってきたのよ…」と小声で教えてくれた瞬間、戦慄が走りました。

しゃ、社長!も、申し訳ない…。

 もう時間は戻すことはできない。でもわたしのために危険を冒してまで約束を守ってくれたのに、なんだこのザマはと、穴があったら入りたくなるほどの無念さを抑えて、とっさに

「社長、申し訳ありません!」と玄関口から奥の社長室まで聞こえるであろう大声で、気持ちを込めて謝罪しました。

 

 しばらくして、ゆっくりと奥のドアが開いて、社長が出てきました。

「あのな、君が昼までに行くと言ったから戻って待ってたんや。午後からになるんやったらそう言ってくれたら、お互い嫌な気持ちにならんでいいやろ?」

 ええカッコしてた自分が恥ずかしくて仕方がありませんでした。こんな気持ちでお客様相手に仕事してたんだなあと、本当に申し訳ない気分で、突っ立っていた情景が未だにハッキリと覚えています。

 

 療養中に、中高生向けの本を手にしていると、

「仕事とは?」の一節が目に飛び込みました。

なんやろうなあ…。家族のために稼ぐこと?人のために役に立つこと?…。

その本にもそう言ったことも書いてありましたが、著者はズバリ、

「仕事とは、約束を守ること。かな…」とまとめていました。

 

 期日を守る。支払日を守る…。なるほど、仕事って約束事で成り立ってるんだと、シンプルながらもよく考えると、大抵のことは当てはまり、約束を守ることは、イコール信頼につながるということになります。

 

 仕事に関する書籍や情報は、山のように次々と出版されたり、マンパワー養成セミナーなどで教え込まれるが、「約束を守る」という、基本中の基本のことって、当たり前すぎて意外に教えられなかったりするもんだなあ。